秋田県美郷町の
『くらし』から気づく
肥沃な大地と、ふんだんな湧き水が育てるお米。秋に田んぼと書いて『秋田』というこの土地の、夏の終わりに広がる黄金の景色と澄んだ空気。120年を超える年月が育てた木々に覆われる美郷の街並み。『くらし』に根付く豊かな水。ここに住む、強く美しい人々。四季の風景、山を愛で拝む気持ち。自然と育まれる『ものづくり』に対する想い。その一つひとつが、この町を訪ねる人を魅了する。
『北のくらし研究所は』
この町からはじまります。
文・わいないきょうこ
秋田県仙北郡美郷町(みさとちょう)。 秋田県南に位置する奥羽山脈のすそ野、
仙北平野に広がる清らかな湧き水と豊かな自然の町です。
この美郷町は母の故郷であり、幼少時代に着物の縫製をしていた祖母を訪ね、何度も足を運んでいた場所です。
三十数年間暮らしてきた英国から日本へ。日本での「ものづくりの現場」を考えていた時、
再びこの町と出逢い、移住を決めました。
私の身長を優に超す積雪と、その分短い春、夏、秋の勢いと恵み。
この環境と共に生きる人たちのくらしがここにあります。
コツコツと時間を惜しまず、根気のいる仕事をする姿勢は、
この自然から生み出されたものと確信を持つことになりました。
雪あかりの中で見る素材のもつテクスチャーを感じたり、色と対峙する時間は
この町の水のように絶え間なく湧き上がるインスピレーションをもたらしてくれます。
そんなワクワクを少しでもいろいろなクリエイターにつなげたいと思うようになり、
また、訪れてくれたアーティストからのリクエストもあり、
「このまちにクリエイターインレジデンスを」、というプランを持つようになりました。
たまたま、3つの町村が合併することで次第に使われなくなった
元六郷町役場を発見できたこともラッキーでした。
構想を練りながら、企画に賛同するメンバーとも出逢いました。
その仲間たちと共に「北のくらし研究所」がはじまります。
この町には私たちがまだまだ発見できずにいる人々がいて、
多くの出会いで生まれる新しいクリエイターとのつながりを大切に育てていきます。
そして、ここでの活動が世界中に広がることを目標に進めていきます。
タフな環境をプラスにする、この町でしかできないクリエイションが
私どもの特色になれたらと思っています。
使われていなかった庁舎は
ものづくりの拠点に
とにかく人が交差し
交わる場所をつくる
代表役員
「北のくらし研究所」は共同代表の
3人の出逢いからはじまりました。
大切にするのはそれぞれの
「個」や「ひと」の魅力。
このまちで縁がつながり、
大きな輪になっていきます。
クリエイティブディレクター
Creative director
わいないきょうこ
Kyoko Wainai
国内外問わず様々な企業やデザイナーとのコラボレーションを通じ、バッグを主軸に多岐にわたるものを製作。舞台、映画などのコスチュームセットデザインも担当。
ブータン王国タラヤナ財団クリエイティブアドバイザーなどを続けながら美郷町にてくらしのデザインラボ『やぶ前』を企画運営。『PARK-いきるとつくるのにわ』秋田市主催の文化創造プロジェクトの一環として食をテーマとした『観察する』のリサーチ活動を主催。
『北のくらし研究所』ではクリエイティブディレクターを担当。
所長
Management director
奥山智佳等
Chikara Okuyama
地方公務員として、千畑町、美郷町に奉職し2023年3月末に退職。総務、企画、財政 農政、教育委員会などの多岐の分野を担当。
『北のくらし研究所』では、所長を拝命。個を大切に、人をつくり、暮らしを中心とし、文化を創造する組織を求め続ける。
プログラムディレクター・広報
Program director / PR
宮尾弘子
Hiroko Miyao
無印良品の商品開発に永く携わったのち、企画ディレクション部統括。企画展や芸術祭、BOOK 事業、IDEE 事業を担当。
『北のくらし研究所』では、プログラムディレクター、広報、SNS 関連を担当。
Support Member
役員
岡田茂義
Shigeyoshi Okada
堀田晴彦
Haruhiko Hotta
扇田 亮
Makoto Ougida
Staff
運営スタッフ
髙橋祐子
Yuko Takahashi
畠山陽子
Yoko Hatakeyama
※ メンバーは随時更新予定です。
これは「北のくらし研究所」を立ち上げた共同代表の3人による座談会です。クリエイティブディレクターとしてまちの人たちとクリエイターの橋渡しとなり様々なコンテンツを生み出すわいないきょうこ(以下わいない)、そして所長を務める奥山智佳等(以下奥山)、プログラムディレクターとして広報を務める宮尾弘子(以下宮尾)が、それぞれの「はじまり」を話します。
宮尾:
北のくらし研究所(通称キタクラ)は、奥山さんとわいないさんの2人の構想をきっかけに始まりました。そのあと宮尾が加わりどんどんまわり出すわけなのですが…。まず、2人が出逢い、想いを形にするまでを教えてください。
奥山:
町役場に長く勤めながら、個人として、町の活性化のためにできることはないかずっと考えていました。というのも、この町では意外と町民同士で交わる機会が少なく、自分や賛同していただけるメンバーが積極的に動くことで何かが変わるのではと思いました。そして、やってみなくては始まらない、飛び込んでみよう…と思い、2014年5月に、美郷町で人と人や、団体と団体をつなぐ活動をしていた六郷地区の扇田亮さん、仙南地区の出雲広大さんの3人で、地域づくり団体 community design misato(通称CDM)をつくり、活動を始め、2019年6月に、美郷町六郷に「旧片桐時計店(通称カタギリ)」という場所を借りました。
わいない:
私は長らくロンドンを拠点にデザインの活動をしていましたが、2019年に帰国し、日本にも定住地とスタジオを作りたい…という気持ちで場を探していたところ、家族のルーツでもある美郷町にたどり着きました。所長の奥山さんは同じ美郷町で新たに物件を借りたもの同士、ご縁もあってあいさつに来てくださり意気投合しました。「冬のつららを見ながら過ごせるようなバーカウンターが欲しいね…」と近隣に住む4人でバーを見立てて楽しんだり。美郷町に住んで、失いたくない素晴らしい建物・風景にもたくさん出逢い、この魅力を伝えることが使命のように思えてきて。
宮尾:
そのような背景から、わいないさんが設計者の岡田さん、デザイナーの澁谷さんとともにコミュニティスペース「やぶ前」を2020年6月24日に立ち上げられました。「やぶ前」の物件は奥山さんが「カタギリ」を始める際にも紹介されたものと聞き、2人のご縁を感じます。ちなみに「やぶ前」はお蕎麦屋さん「やぶ茂さん」の前に位置するので「やぶ前」。この名前の由来もほほえましい。そこから2人は、さらにまちとの関わりを深めていきます。
奥山:
カタギリのこともあり、距離がより一層近くなりました。
そうすると気づくことも増えます。「キタクラ」のメンバーにもなっていただいた扇田さんと共に雪の時期に今まで手を付けられていなかったエリアの除雪を始めると、それによって子どもたちの通学路などもきれいになり保護者の方々から非常に喜ばれました。そうすると「やらなきゃな」と、もっとまちのことを考えるようになりました。
わいない:
わたしも「やぶ前」を運営しながら、人に触れ、まちに触れ、創作活動をもっとよりよくするための環境や、この地に終のすみかが欲しい…となってきました。
奥山:
そんな中、「キタクラ」の舞台となるこの元六郷町役場庁舎を有効活用するためのコンペがスタートするんです。4月下旬から企画の調整のお手伝いを始めましたが、役場が求めることに対しては、役場に勤めている私の経験が活かせると思いました。
宮尾:
提案書は奥山さんのアドバイスや、わいないさんの仲間たちの協力もあり完成。無事採択されました。これが1つ目のターニングポイントでしたね。
奥山さん:
昨年7月にわいないさんから呼び出しがありました。いつもと違う真顔で⋯。そこで「北のくらし研究所」の所長を頼まれることに。家族にも話をして、役場を退職して引き受けることを決めました。
わいない:
私は企画を推し進めることはできますが、組織化するための所長の立場の人が必要と考えていました。そこには、町のことを第一に考える奥山さんの存在が必要不可欠でした。
奥山さん:
そうして、「北のくらし研究所」の原型はスタートしました。進めれば進めるほど、民間の感覚で動ける経験のあるコアメンバーが足りないなと感じるように。役場で地域のみなさまとつながる自分、フリーランスで国内外のアーティストやデザイナー、モノづくりのメンバーとつながりのあるわいないさん。構成要素はたくさんありますが、ここをバッサリさばいてくれるような人はいないかな⋯。「あ、宮尾さんいた」と。そこでお願いをしてみました。
わいない:
それと同時に、宮尾さんが私たちの様子を「自分事」として覗いてくれているような気持ちも感じていました。3人がそろった瞬間。お互いの感覚が1つになっている実感があり。
宮尾:
すぐに OK してしまいました(笑)。おもしろそうだったし、必要としていただけるのは嬉しいことです。私も民間企業での経験を通じ、たくさんの才能あるデザイナー・アーティスト、モノづくりができるメンバーと出逢いました。そういう人たちとイーブンな関係で活動を推進できる環境を作りたいとずっと考えていましたから。
ここが2つ目のターニングポイントですね。
奥山:
今、とてもすっきりとした気持ちで「北のくらし研究所」を向き合っています。「役場を辞めてでも」という強い気持ちで参加しました。これからの立ち上げ、存続していくために、スピードを持って事業化に取り組んでいきたいと思っています。
宮尾:
北のくらし研究所を通じて、どんなことを実現したいですか?
奥山:
「キタクラ」は合同会社です。ただ「経営方針」という固いものはありません。「個」や「人」を大事にする場所でありたいと考えています。例えば移住者募集⋯を前に出すのではなく、ここに住むひとたちが幸せなら、まちにもっと人が来る。わいないさんは「北のくらし研究所」のコンセプトに共感する人々を呼び、活動につなげてくれます。そして運営スタッフとして現場を支えてくれる髙橋祐子さん、畠山陽子さんは美郷のくらしをていねいに表現してくれます。宮尾さんも、メンバーである岡田さん、扇田さん、堀田さんにもそれぞれ想いがあります。これからどんどんプロジェクトメンバーも増えていくと思いますが、常にそれぞれの個を大切にし、活動の輪を広げる仕組みを作っていけたらと考えています。
宮尾:
一緒に広げていきたいです!本日はありがとうございました。
北のくらし研究所がこの先、やること
ここを拠点に多様なジャンルの
クリエイターを招いて
地域とのコミュニケーションをより活性化し
様々な「つながり」を生み出して
いけたらと考えています。
ギャラリーの運営
KITA NO KURASHI Gallery
建物に入るとすぐに大きなギャラリー空間が登場します。「北のくらし研究所」で生み出される作品の展示や活動の発表をはじめ、パフォーマンスや映像の上映など、色々な顔を持ったイベントをこの空間で開催していきます。
WORKSHOP
2024年5月11日、12日
5月1日から開催の企画展【日常に笑いを!平凡なくらしの楽しみ方】では、クリエーションが生み出される経緯や、わたしたちの身近な素材であるメモパッドから生まれていく世界を来場されるみなさまに楽しんでいただくことを目的としています。今回のワークショップでは、それに加えて本企画展アーティストの先斗ポン太さんが日々あらわす「今日のハナさん」のように、自分たちのくらしに登場するキャラクター(お父さん、お母さん、兄弟姉妹や祖父母、ペット、友達⋯) を楽しく描くことを、手を動かしながら一緒に模索する時間を設けます。
EXHIBITION
2024年5月1日〜20日
アーティストの先斗ポン太さんのイラスト作品のプロセスから完成までを展示する企画展を『北のくらし研究所』内のギャラリーにて開催します。ポン太さんの手により息を吹き込まれた数々のキャラクターたちが活き活きと画の上を舞い踊ります。日々の笑える暮らしのヒントが散りばめられた作品群です。ぜひ、そのセンスをお持ち帰りください。
先斗ポン太 Ponto Ponta
絵師。国際浮世絵学会所属/ 多摩美術大学日本画科卒業。広告、書籍、キャラクターグッズなどで幅広く制作。作品のタイプもアメコミ、和風などジャンルにとらわれず描いている。
終了しました | 映像あり
2024年2月23日(金)
田植え、稲刈りに続く第3弾は「酒蔵見学」と「洗米作業体験」。その後、5種の日本酒を呑み比べながら愉しむ新酒の会も開催。全3回の参加皆勤賞の方には、感謝を込めてプレゼントが贈られました。
終了しました
2023年12月16日(土)13時〜
わら細工製作技術の伝承をテーマに発足した「美郷わらの会」による毎年恒例のしめ飾りづくり。縄を編むことから、しめ飾りの完成までをメンバーが指導してくれます。しめ飾りにこめられた意味や想い、またお正月を過ぎてからのしめ飾りの扱い方などもこの機会に学べます。より良い新年を迎えるために一緒に作ってみませんか?
終了しました | 映像あり
2023年9月23日(土)
美郷町で日本酒をつくる「稲刈り」。5月の田植えに続く日本酒イベント第2弾。晴れやかな空に黄金色のフィールドが美しく映えます。美郷町の四季の魅力を存分に感じ、食と農を楽しみながら考えるよい機会となりました。
終了しました | 映像あり
開催日:2023年6月4日(日)
パフォーマンスアーティスト COCOLOCO ・トレバースチュワートとヘレンスタットマンの2人が独特の間合いで繰り広げるナンセンスなパフォーマンス。そして彼らと共にチェロ奏者、トランペット奏者、ノイズミュージックアーティスト、ボイスパフォーマンスアーティスト、ダンサーも現れます。かつてたくさんの役場職員さんたちが働いていた元庁舎。今は『北のくらし研究所』となり、この空間に異次元からパフォーマンスアーティストたちが迷い込みます。庁舎の残像とともにたくさんのストーリーを膨らませます。上演はツアー形式で行われ、各階を登り覗き込むように観賞します。
『ちょうちょうはどこにいますか?』
その言葉をキーワードにご案内をさせていただきます。
終了しました | 映像あり
開催日:2023年5月27日(土)
美郷町で栽培されている「酒米 美郷錦」をキーワードとして、田植え、稲刈り体験から食への探究、地域の豊さを実感していただくイベントです。
年3回の交流(田植え・稲刈り・新酒発表会)を通じて、生産者、日本酒の酒造者とのつながりを大切に育ててまいります。
【 賛同 】
合名会社 栗林酒造店 様
美郷酒米研究会 様
クリエイターインレジデンス
美郷町に住んでいるという感覚で
Creation していただける場所。
宿泊ができる施設や、
コワーキングスペースなども用意。
創作のための工房では匠とともに
モノづくりの道具にも触れられます。
さまざまなクリエイターと北のくらし研究所が共同で織りなす企画展を定期開催。地域のみなさまとの交流会やイベントも予定しています。貸し出しも行っています。詳しくはお問い合わせください。
Free Wi-fi が利用可能なコワーキングスペースです。テーブルや椅子が用意されているのでお好きな席で勉強や読書、デスクワークなどを行えます。集中したい時にぜひご利用ください。
宿泊客以外も利用できるシャワールーム、ランドリーです。美郷町の温泉施設もオススメですが、気軽に済ませたい方はこちらをご利用ください。有料のアメニティも用意しています。
1泊から創作活動での長期滞在まで。6畳2間つづきの和室は1部屋につなげて広々と利用することも、分割してリーズナブルに利用することも可能です。ご希望に合わせたプランでお使いください。
レジデンスの詳細はこちら
会議や会合に最適な2階のミーティングルームです。利用目的により座卓の和室かテーブル・椅子のある会議室かを選ぶことができます。用途に応じてご相談ください。
縫う
パターンカッティング、縫製の匠、着物裁縫の匠、着付の匠を中心とした縫製のためのアトリエです。
描く
北のくらし研究所を訪れたアーティストとみなさんが、この施設全体を使って、思い切り自由にドローイングやペインティングを楽しめるプログラムを予定しています。
造る
こども造形のワークショップや、木材などの身近な素材や事柄をテーマにした美術作品の制作を行うアーティストによる造形教室です。
刷る
昔から旧六郷町役場の情報を載せた印刷物に使われてきた活版印刷の技術を活用できるスタジオが登場する予定です。活版印刷のあたたかみのある風合いがお楽しみいただけます。
今後はそれぞれの『匠』たちとともに
学べる、講座も開講予定です
メンバー制度
Under Construction